NEXT ACTION of Retail vol.01 プロとともに考える、リテール業界が「いまやるべきこと」【セミナーレポート】

2021年6月16日、EC支援セミナー番組「NEXT ACTION of Retail」第一回をオンラインで開催しました。ゲストに株式会社コメ兵 WEB事業部部長 甲斐 真司氏をお迎えし、「コメ兵のNext Actionを探る」をテーマにディスカッションを行いました。

コメ兵はコロナ禍においてどのようなマーケティング施策を実施しているのか、どんな課題があり、将来はどのような見通しを立てているのかなど、リテール業界が「今やるべきこと」のヒントをお届けします。

■開催概要
開催期日:2021年6月16日(水) 16:00〜17:30
参加費:無料
視聴形式:zoomオンラインセミナー(100名限定・抽選あり)

■出演者
・吉澤和之 awoo Japan 日本事業開発責任者 執行役員
・鈴木睦夫 オムニコミュニケーションコンサルティングオフィスPresident & CEO
・甲斐 真司 株式会社コメ兵 WEB事業部 部長
・石井しおり 九州朝日放送及び北海道文化放送の元アナウンサー

動画をご覧になりたい方はこちら
https://www.awoo.ai/ja/archived_videos/next_action_of_retail_vol01

顧客接点の再定義へ

最初のトピックでは、オムニコミュニケーションコンサルティングオフィスの鈴木氏より、「オムニチャネル」の定義について話がありました。鈴木氏は、オムニチャネルとは顧客が必要とする情報を顧客の欲しいタイミングで、いつ・どこでも手に入れられる環境を作ることだと説明しました。リアル店舗もオムニチャネル化の手段の一つであり、オンラインとオフラインの垣根を越えて顧客接点の再定義を行うことが必要だという考えを表しました。

また、顧客とのコミュニケーションをオムニ化する事で、嫌われもののイメージが強い広告が顧客に「ありがとう」と言われるような有益な情報になると述べました。

消費の三形態とは

続いて鈴木氏は、オムニチャネル化の弱点として過度なパーソナライズ化によるセレンディピティ(偶発的消費)の機会損失を挙げました。パーソナライズが進むと、顧客がいつも買っている商品の関連・類似商品ばかりがレコメンドされ、リアル店舗で起こるような「素敵な商品との偶然の出会い」「ワクワクするお買い物体験」が失われる可能性があります。

鈴木氏は、以下の消費行動の三形態について言及し、

  1. 能動的消費:目的買いや、必需品の購入
  2. 受動的消費:レコメンドされた商品の購入
  3. 偶発的消費:一目惚れ、偶然の出会いによる商品の購入(セレンディピティ)

オンライン・オフライン問わず、消費者の心を動かすような体験や感動の場を創出し、偶発的消費を喚起することが今後のマーケティングの重要なポイントになると述べました。

緊急事態宣言下のECの状況

 

次のトピックでは、2020年1月から2021年2月までの、日本におけるコロナウイルス陽性者数とEC消費(成長)指数のグラフを紹介しました。2020年の緊急事態宣言中、コメ兵様のECサイトでは何が起きていたかを甲斐氏に伺いました。

Q.このグラフでは、緊急事態宣言中にECが急成長していますね。コメ兵様も同じ状況だったのでしょうか?(吉澤)

甲斐氏:はい、このグラフとほぼ同じですね。2020年4〜5月は店舗を休業したこともあり、ECサイトの売上が伸びて、しばらく忙しい時期が続きました。6月以降も、ECの売上比率はコロナ前より高くなっています。恐らくコロナを機に初めてECを利用した方が、継続してご利用いただけるようになったのではと考えています。

Q.緊急事態宣言中に、コメ兵様のECサイトで行った施策を教えてください。(吉澤)

甲斐氏:まずは、配送料と返送料を無料にしました。次に、店の在庫を倉庫(ECサイト)に移動し、店舗スタッフにも倉庫作業を手伝ってもらいました。「とにかくECで売らないといけない」と全社一丸になっていましたね。2019年8月にECサイトのリプレイスをした背景もあって、驚くほどECサイトの売上が上がりました。

Q.ECサイトと店舗の関係性はどうですか?(吉澤)

甲斐氏:協力体制ができていると思います。KOMEHYOでは、店舗の在庫をECサイトでも販売しています。大半が中古品ということもあり、ECサイトを見て店舗に足を運ぶお客様も非常に多いです。そのため、ECの売上が店舗の売上にもなる構造にしています。店舗スタッフは、ECサイトの重要性を十分に理解してくれていますね。

また、コロナ前からOMOプロジェクトが進行していたこともあり、Zoomを使った買取査定やLINEを使った顧客とのコミュニケーションも早い段階で取り掛かることができました。今やスタッフにとってオンラインでの接客は当たり前になっています。

リユース企業におけるコロナの影響度

 

リユース業界における商品ジャンル別のコロナ影響分布図を元に、今後の売上対策に話が移りました。

Q.コメ兵様では、売上影響が高いブランド品と衣料を主に扱っていらっしゃいますが、実際はいかがですか?(吉澤)

甲斐氏:はい、コロナ禍でブランド品と衣料は大きな影響を受けました。現在もその影響は残っています。KOMEHYOでは、①買取 ②メンテナンス・ささげ(EC用の撮影・採寸・原稿作成) ③店舗とECで併売、という流れで仕入れ〜販売を行います。新着商品がよく売れるという特徴があるため、店舗での買取が難しくなるとECの売上に影響がでます。特に最初の緊急事態宣言で店舗を閉めた時は、買取に大きな影響が出て、特に宝石やブランド時計は厳しい環境になりました。

Q.コロナ前は、主に店舗で買取をしていたと思いますが、今後その接点をどう広げていくかが課題でしょうか?(鈴木氏)

甲斐氏:おっしゃる通りです。コロナ前から出張買取や宅配買取、イベント会場での買取など行っていましたが、今後も接点を広げていきたいですね。

Q.アンケート調査では「ネット販売の強化」を挙げた事業者が最も多いという結果になりました。コメ兵様では、どのような施策を行っていますか?(吉澤) *以下表参考

甲斐氏:郊外店強化と質預かり以外は、ほぼ全ての施策を行っています。越境ECに関しては、マーケットが巨大なのでコロナの影響は少なく、前年度の売上を超えています。

Q.今後はどのような施策が有効でしょうか?(吉澤)

鈴木氏:顧客の環境や行動の変化を捉えて、顧客との接点を即座に変える勇気が必要だと思います。コロナで打撃を受けている日本酒業界を例に挙げると、海外での日本酒ブームを察知して越境販売を行った企業では、商品が品切れを起こすほど人気が爆発したそうです。顧客がどこにいて、何を求めているか、それをどう伝えるかというアンテナを張ることが大切だと思います。

コメ兵がawoo AIを導入した理由とは?

このトピックでは、コメ兵様が「awoo AI」を導入した背景と理由についてお伺いしました。

甲斐氏によると、KOMEHYOは商品数が非常に多く、数万点に及ぶ商品からお客様が潜在的に欲しいと思っている商品に辿り着かせることに課題を感じていました。レコメンドよりも探しやすく、偶発的消費を生み出せるサービスを求めていたそうです。

awoo AIを導入した理由は2つ。一つ目は、ECサイトでは再現が難しかった、商品との偶然の出会いや「これすごく安いじゃん」「前から欲しかったものだ」というような楽しい買い物体験をECサイトで実現できる点で、二つ目は、導入後は完全自動運用でやってくれる点に魅力を感じたからだと述べました。

コメ兵がとらえるOMOとは

 

続いて甲斐氏から、コメ兵におけるOMO戦略について説明がありました。オンラインとオフラインをシームレスに繋ぐために、コンタクトセンターとECサイトを重要な顧客接点として位置付けました。全てのチャネルで一貫した顧客体験を提供するためです。

これに対し鈴木氏は、「コメ兵様のように顧客体験を中心とした考え方が大切だ」と意見を述べました。

Q.今後のデジタルやOMOを強化に向けた施策は?(吉澤)

甲斐氏:鈴木さんがおっしゃる通り、顧客体験(CX)が中心です。カスタマージャーニーを作成してCXが高まるポイントを洗い出し、各ポイントに対して適切なデジタルツール等を利用して一つ一つ施策を実行していきます。偶発的消費は「楽しいお買い物体験」という大切なCXの一つです。awoo AIには期待しています。

ワクチン普及後、OMOはどう浸透していくのか

 

 

最後のトピックでは、「ワクチン普及後の消費者行動の変化」について議論が交わされました。株式会社ローランド・ベルガーのデータによると、消費者のデジタルシフトが急激に進み、購買行動のOMO化が顕著に進むと予測されています。

具体的には、

  1. 自宅滞在が増え、SNSや自社アプリ経由での認知増
  2. 中国で急拡大中のライブコマースが日本でも浸透中
  3. EC必須の状況が、EC移行を急速に推し進める・ECで頼み、店舗での試着・受け取りという活用も加速

といった形でOMOが浸透すると説明しました。

Q.この点について、鈴木さん、甲斐さんの考えをお聞かせいただけますか?(吉澤)

鈴木氏:商品やカテゴリーによって異なると思います。重要なのは、店舗で受けられる接客や感動体験といった購買を後押しする顧客体験をどうオンラインで実現するのかなど、顧客体験を中心に考えながら環境の変化に敏感に反応して施策を打ち続けることです。完璧を求めず、どんどん実験していくことが大切です。

甲斐氏:中古のブランド品販売は、ECだけで完結することは正直難しいです。私たちは、店舗で実物を見てスタッフの接客を受けて納得して買っていただくことに一番力を入れてきました。それは今後も変わりません。引き続き接客スキルの向上と、ECで簡単に買取・購入をできるようにするといったところを強化していく必要があると思っています。

鈴木氏:顧客との信頼関係や繋がりが深くなれば、ECでの購入もさらに増えるのではないでしょうか。過去の購買体験やコメ兵への信用・信頼の醸成により、ECだけで完結することも可能になると思います。

Q.コメ兵様の今後の展望をお聞かせください。(吉澤)

甲斐氏:お客様の買い方が多様化しているので、SNSやライブコマースを含め、お客様が一番便利だと感じる買い方やサービスを提供し続けていきたいです。

最後に、鈴木氏は「オムニチャネルとは、全てのチャネルで顧客中心主義を徹底すること。これはBtoCだけではなくBtoB商材でも同じ。EC事業者様は、一度そこに立ち戻って考えてみては」とセッションを締めくくりました。

 

 

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オムニコミュニケーションコンサルティングオフィス President & CEO

鈴木睦夫氏 へのオムニチャネル施策に関する相談先
mutsuo.suzuki@omnicom.jp